皆さんは、自分が着ている服の色を相手にお話ししたり、ショッピングで相手に服の色についてアドバイスをする際、どのように表現しながら伝えていますか?いずれのシーンにおいても、「赤いブラウス」とか「緑のスカート」などのように「基本中の基本である色+アイテムの名前」で伝えるのがごく普通ではありますが、赤は赤でも黄色寄りの赤なのか、紫寄りの赤なのか、具体的には伝わりません。実際色の識別は700万から1000万通りと諸説あるようですが、色の見分け方には個人差があり、また見る条件によっても変わってきます。服の色をどのような基準で見分け、どのように表現すれば相手に色のイメージを伝えられるのでしょうか?相手によって色の捉え方は違っていても、自分が着ている服の色を正しい基準で理解し、より具体的に説明できるようになることは、ファッションでありのままの自分を言葉で表現するための重要な手段でもあります。
基本的な有彩色である「赤・青・黄・緑・紫」。これらの色は、太陽の光を成分で分けた際に、それに現れる代表的な色といわれています。さらに、有彩色は色がどれだけはっきりしているか色味を示す「色相」と、白や黒を足すことで色の明暗が分かれる「明度」、目が覚めるくらい鮮やかな色であることを示す「彩度」によって変化します。この3つを合わせて「色の三属性」と呼ばれていて、この関係性を知っていればスタイリングの配色センス差がつくといっても過言ではありません。(なお、配色については近日中に紹介したいと思ってます!)
色相、明度、彩度を、それぞれどのように見分けていけばよいのか、絵の具やサインペンによくある普通の「赤」を例に見ていきましょう。
この「赤」に「青」を少し混ぜると、基本的には「紫」に変化します。
この「赤」に「黄」を少し混ぜると、基本的には「橙」に変化します。
赤に混ぜる色の量によっては完全に赤ではなくなってしまいますが、赤に違う色を混ぜたことによって変化しつつもまだ赤っぽく見える色を「〜みの(〜がかった)赤」と表現することができます。これを踏まえると、赤だけれども紫に近い色を「紫みの(紫がかった)赤」、赤だけれども黄に近い色を「黄みの(黄色みがかった)赤」と表現できる、ということになります。これが、「色相の変化」です。
では同じ「赤」を例に、無彩色である「白」「灰」「黒」を混ぜた場合はどうなるでしょうか?これは「明度の変化」を表していて、有彩色に白を足せば足すほど色が薄くて明るい色に変化することで明度が高くなります。一方、有彩色に黒を足せば足すほど色が濃くて暗い色に変化することで明度が低くなります。すなわち、赤に白あるいは黒を混ぜたことによって、「明るい(薄い)赤」「暗い(濃い)赤」と表現することができます。また、その中間でもある灰も、明暗次第(グレースケール)では「色が明るい灰みの赤」や「色が暗い灰みの赤」と呼ぶことができます。白に近い赤なのか、黒に近い赤なのか、それとも灰に近い赤なのかを区別することで、色の明暗をイメージしやすくなるでしょう。
下図のように、白も黒も混ざっていない、比較的鮮やかな「赤」。このような色を「純色」とも呼んでいるのですが、この赤に白を少しずつ足していくと明度は高くなるものの、その分鮮やかではなくなってきます。これを「彩度の変化」といい、彩度は明度と密接な関わりがあります。赤に白を足せば明度は高くなるが、彩度は低くなります。赤に黒を足せば明度も彩度も低くなります。ただ、純色の赤からさらに彩度を高くするには足す色によって違ってくるため今回は触れていないのですが、白も黒も混ざっていない赤に「鮮やかな」などと付け加えることで、よりはっきりとした色であることを伝えやすくなるのです。
今年の1月に、モデルのアンミカさんが某バラエティ番組で放った言葉「白って200色あんねん」「黒はすべての色を煮詰めると黒だから300色」をご存じでしょうか?白の200色は、手元にあった肌触りのよいタオルを褒めることはできますかというMCからの質問に対する言葉だったのですが、白でも黒でも有彩色でも、その色がついている物の素材や光の加減、青みがかっていたり黄みがかっていたりしているなど、一つの色を人間の感性によって何パターンにも分けられてしまうのです。そのような色の可能性をコンパクトに秒で「白って200色あんねん」とスパっと褒めることができるアンミカさんの話術のクオリティを私は今でもリスペクトしています。
色は薄さ、濃さ、明るさ、暗さ、鮮やかさによって自分がなりたいイメージや相手に与える印象が変わってきます。そのためにも、自分が着ている服、あるいは紹介したい服の色に少しでも修飾語を付け加えてあげることによって、スタイリングにおける配色の幅も広がり、理想のコーディネートをよりイメージしやすくなるのです。